自動車メンテナンス・整備の基本

初心者のクルマいじり 工具の使い方DIY入門

自動車に使われている「ネジ」「ボルト」「ナット」について


車のエンジンや足回り、ミッションといった重要な部品は全てネジで組み立てられています。
自動車に使われているパーツで最も多いのは間違いなく「ネジ」でしょう。




日本車のネジのサイズは、メートル法が採用されていて、JIS規格を基準として、JASO(自動車工業規格)が用いられています。
(アメ車はインチサイズが採用されているため、日本車との共通性はありません)

ネジを構成する主な要素は、長さ、ネジ径(呼び径)、サイズ、ピッチです。
(ネジ径とはネジ山の太さ、サイズとは6角面の対面の長さ、ピッチとはネジ山の間隔)

ネジを取り付ける際の注意点とは

初心者の方が注意したいのは、ピッチ
ネジ径が同じでも、ピッチが違う場合が当然あります。

この場合はネジ径が同じでも、全く違うネジだと考えなければなりません。
ネジ径が一緒だからと無理にねじ込んでしまうと、ネジ山が破損してしまいますので注意が必要です。

また、ネジを取り付ける時のネジ山の細かなごみもネジの破損の原因になります。

ネジ山にゴミが付着していると、ネジ山を傷めるだけでなく、正確な締め付けトルクが得られません。
ネジを取り付ける際は、パーツクリーナー、柔らかいワイヤーブラシ(使い古した歯ブラシ)などを使ってきれいにしてから取り付けるようにします。

もうひとつ確認したいのは、ネジ山の潰れ

ネジ山が潰れたネジを無理に取り付けると、相手側のネジ山まで破損させる可能性があります。ネジ山の破損に気づいたら必ず新品か代用品に交換するようにします。

ホイールナットの攻略法とは


ホイールナットに関して、初心者の方の最初の難関は、「適正トルク」という課題。
実際は、ほとんどの場合、ナットを締めすぎているようです。

ホイールナットに限らず、大きなボルトと同じトルクで、小さいボルトを締め付ければ、ネジ切れてしまう可能性が高くなります。

タイヤ交換時のホイールナットの締め付けトルクは、ほとんどが締めすぎになっています。

実際、タイヤを外す際に、足でレンチをガンガン踏みつけて、やっと緩み始める時「キキーッ!」と悲鳴のような音がなることがあります。
明らかにオーバートルクで取り付けている証拠です。

ちなみにホイールナットの適正トルクは、車種によって違いますが、およそ95N・m~120N・m以内で充分です。

これは、大人の男性なら十字レンチを両手でギュッと締めるくらいのトルクです。

また、勘に頼らず、トルクレンチを1本用意しておくようにしましょう。

(1998年からトルク単位は、「N・m(ニュートン・メートル)」に変更になっています。)
(およそですが、「1キロ = 10ニュートンメーター」と覚えてしまえばいいと思います。)

ボルト・ナットの攻略法


自動車で無数に使われているネジの中でも、最も多いのがボルト・ナット。
ボルト・ナットは、締め付ける時より、緩める方が注意が必要です。

クルマのメンテをしていると、固着したり、錆びたりして回せないボルトと戦う場面が必ずあるはずです。
こういったボルトをただ力任せにこじあけると、頭を舐めてしまったり、ネジ山をつぶしてしまったり、というトラブルになります。

◆ボルトの緩め方

1. ボルト・ナットに対して、レンチを正確にはめ込みます。
2. 片手で、はめたレンチが外れないようにホールドします。
3. 左回りに回すと緩みますが、この時は、可能である限り手前に引きながら回します。
(押す方向に回すとレンチが万一外れた時に痛い思いをしたり、力加減が難しい場合があります。)


◆ボルト・ナットを緩める・締め付ける工具
ボルト&ナットを扱う作業は、基本的にメガネレンチかソケットレンチを使用します。
スパナは、やむを得ない場合以外、使わないようにします。

また、ソケットレンチのエクステンションバー(延長棒)を使用してボルトを緩める際は、ソケットが斜めに傾かないように、ボルトに対して垂直にバーを保ちながら押し当てるように力を加えて回します。

◆緩まないボルトの緩め方
固くて回せないボルトは、メガネレンチを外れないようにしっかり保持しながら、レンチの先を手のひらで叩いてみましょう。

プラスネジの攻略法



◆プラスネジの緩め方
1. ビスに合った刃先を持つドライバーを用意する。
2. ネジに対して、垂直に刃先をあてる。
3. 垂直にあてたドライバーに一方の手を押し付ける
4. もう一方の手で、左に回す。






プラスのネジを攻略するポイントは緩める時にあります。

ボルト・ナットと違い、ビスはトルクをかけるとネジ山から自然に外れようとするカムアウト現象を起こし、プラス部分を舐めてしまう恐れがあるため、強いトルクをかけられません。

ネジは、締めるにしろ、緩めるにしろ、必ずサイズを確認して適正なドライバーを使用することが大切です。
ネジでよくあるミスとして、サイズが合わない小さいドライバーを使ってネジ山を潰してしまう、というのがあります。

サイズが小さいドライバーでも、ある程度は回せるので、気づかないうちにネジ山を舐めてしまうことにつながります。

実際、ビスに適正サイズのドライバーをあててみると、ほとんどグラつくことはありません。
この時、10度近くドライバーが傾く場合、ドライバーのサイズが小さい可能性があります。

ネジ山を潰してしまった時の対処法


● ビスは、ハンマーなどでショックを与えてやると固着していた部分が剥がれて動いてくれることがあるので、貫通タイプのドライバーをあてて、ハンマーで叩いてみる。

● ロッキングプライヤーや「ネジザウルス」を使って、ネジにガッチリ食い込むくらいに掴んでドライバーを併用しながらゆっくりと回してみる。

● KURE「5-56」などCRCをビスにたっぷり吹いておいて1~2時間ほど放置した後、回してみる。

どうしても動かないネジを外す専用工具

舐めたり、潰してしまって、どうにも回せなくなったネジは大変厄介です。
作業を中断してそのリカバリーに右往左往することになってしまいます。
こういうピンチは手っ取り早く、専用工具で切り抜けてしまいましょう。

★ タップ&ダイスセット
タップ&ダイスは、要するに雄ネジや雌ネジを切って外してしまおうという工具です。

必ずもっていないといけない工具ではありませんが、あると便利です。
アジア製の安物セットで十分使えます。

★エキストラクター

エキストラクターは、折れて取れなくなったボルトを取り除くための工具です。
使い方は、ドリルで穴をあけた後にエキストラクターを差し込んで回します。






★インパクトレンチ

インパクトレンチは、硬くて回せないプラスのネジに効果的です。
潰れたネジにあてて、ハンマーなどで打撃を与えて外す工具です。